通信制大学から臨床心理士は目指せる?通信制大学で心理学を学ぶメリットデメリットも解説!

「臨床心理士」とは、心理学の知識を通して人の心に寄り添い、悩みや不安の解決に導く専門家です。

自分自身や周囲の経験から目指す人が多い職業ですが、通信制大学から臨床心理士は目指せるのでしょうか?また、社会人で働きながら取得するにはどのような道のりが必要なのでしょうか?卒業にかかる年数や学費など気になるポイントも解説します。

目次

臨床心理士とは

「臨床心理士」とは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会(以下、協会)が認定する民間資格です。
臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人の心に寄り添い、悩みや不安の解決に導く「心の専門家」と言えるでしょう。具体的には、カウンセリング、心理テストなどを用いてクライアントを援助しており、活動の場は、医療、教育、福祉、産業、司法など多岐にわたります。精神疾患の患者数の増加や、多様化が進む現代社会で注目されている職業の1つです。

参照:日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは

通信制大学から臨床心理士になれる?

結論から述べると、通信制大学から臨床心理士を目指すことは可能です。通信制大学から臨床心理士になるまでのルートを詳しくみていきましょう。

臨床心理士になるためのルート

臨床心理士になるための基本的なルートは以下の通りです。

  • 大学を卒業する
  • 指定大学院を修了するなどして受験資格を得る
  • 臨床心理士資格試験に合格する

詳細は、協会のホームページをご確認ください。
参照:臨床心理士資格認定協会「臨床心理士になるには

通信制大学から臨床心理士になるには

臨床心理士になるために、まずは4年制大学を卒業しなければいけません。通信制大学も4年制大学にあたりますので、臨床心理士を目指すことができます。ただし、通信制短期大学では、大学院進学のための要件が満たされないので注意しましょう。

大学の学部や専攻分野は問われません。文系、理系に限らず、どの学部を卒業していても臨床心理士を目指すことができます。ただ、心理学を専攻した方が、心理学を早い段階で専門的に学べる上、院試に向けての勉強ができるためおすすめです。心理学を学べる通信制大学は国内では約10校あると言われています。

指定大学院などを卒業する必要がある

大学を卒業した後、基本的には協会から指定されている大学院や専門職大学院を卒業し修士号を取る必要があります。
通信制の大学院で受験資格を得ることができるのは、令和6年4月現在、以下の3校です。

第一種指定大学院第二種指定大学院
東京福祉大学大学院放送大学院
佛教大学大学院

3校いずれも入試倍率は高めです。大学院に関しては、通信制以外の選択肢も頭に置いておいた方が現実的でしょう。

公認心理師資格も目指す場合

臨床心理士を目指す場合、大学の専攻は問わないとお伝えしてきました。
しかし、臨床心理士と同時に公認心理師のダブルライセンスを目指す場合には、公認心理師の規定の科目を履修できる大学を卒業しなければいけません。

令和6年4月現在、公認心理師に対応したカリキュラムが受講できる通信制大学は、以下の4校となっています。

通信制大学で心理学を学ぶメリットとデメリット

通信制大学で心理学を学ぶことには、メリットもデメリットどちらもあります。

通信制大学で心理学を学ぶメリット

通信制大学で心理学を学ぶことにはこのようなメリットがあります。

  • 時間や場所に縛られず生活のペースに合わせて学習できる
  • 比較的簡単に入学することができる
  • 比較的学費が安い
  • 編入制度がある

通信制大学で心理学を学ぶデメリット

一方、通信制大学で心理学を学ぶにはこのようなデメリットもあります。

  • 実習科目のためにスクーリングが必要なこともある
  • 実習科目は人数制限があるため争奪戦になることがある
  • モチベーションを維持すことが難しい
  • 困った時にすぐ質問できない
  • キャンパスライフが送れない
  • 卒業率が低く、できたとしても4年以上かかる可能性がある

心理学を学べる通信制大学について

心理学を学べる通信制大学について気になるポイントをピックアップしてみました。

通信制大学の選び方

大学を選ぶために、まずは自分自身が「心理学の中でも特に何を学びたいか」を決めておくことが大切です。例えば、カウンセリング、精神疾患、LGBTQ+、障害者支援、犯罪心理など、人によって他にも色々あるでしょう。
その学びたいテーマを扱っている授業があるか、もしくは、学びたいテーマを専門としている教員がいるかを軸に大学を選ぶと、自分の学びたい内容とマッチしやすいです。また、スクーリングがある大学の場合は、時間や料金の負担がどれくらいかかるのか確認しておくことも大切です。

入試方法、入試倍率について

ほとんどの通信制大学の入試は書類審査のみになります。基本的に落ちることはないため、倍率は1以下と言えるでしょう。ただ、「審査」ですので落ちる可能性は0ではありません。必要な書類をしっかりと揃え、期日を守って臨む必要があります。

スクーリングについて

多くの通信制大学では年間10日以上のスクーリングが必要で、その大学、もしくは、家から近いキャンパスに行かなければいけません。平日だけでなく、土日や夏期集中の形をとっている大学もありますので、仕事や生活に合わせて通うことも可能です。
また、中にはスクーリングが実質ない大学もあります。スクーリングでは、オンラインでは行えない心理学実験やカウンセリングの実技科目が行われる大学が多いです。

学費について

心理学を学べる通信制大学を4年で卒業すると、学費は70〜140万円ほどかかると言われています。入学金は、全ての大学で必要となり、3万円前後が相場となっています。
授業料は、年間で一律に決まっているところと、1科目ごとに5,000〜35,000円と決まっている大学に分かれています。

資格取得までにかかる時間

臨床心理士取得までにかかる時間は、大学入学から最短で7年です。
※大学4年間+大学院2年間+社会人経験1年間=7年間

ただ、社会人で編入制度を使う場合には5年ほどで取得できる可能性もあります。

臨床心理士のやりがい

ここまで読んで「臨床心理士は時間がかかるし難しいかも…」と思われる方がいるかもしれません。臨床心理士以外に、こころの問題を支援する職業として、精神科医・心療内科医・精神科看護師・保健師・精神保健福祉士・教員などがあります。
しかしながら、臨床心理士として、他の職種にない大きなやりがいを感じる場面があります。それは、クライアントの問題が改善したときです。死にたいほど辛い気持ちを抱えている方でも、話に耳を傾けている内に「楽になった」「ありがとう」と言われることがあります。そのような時は、その人の役に立てたのだなと実感してやりがいを感じられます。
また、クライアントについて、専門職同士で会議をする場面で、心理士としての観点で挙げた意見が評価されていると、専門性に誇りを感じられます。
病院や学校など限られた時間内での関わりと違い、クライアントに対する時間を長時間確保して、じっくりと向き合えることは、心理士ならではの魅力でしょう。
なお、カウンセリングや心理検査を業務としてやっていきたいのであれば、臨床心理士資格もしくは公認心理師が、実際に就職しやすいという現状です。

まとめ

今回は、通信制大学から臨床心理士を目指す道のりを解説してきました。
臨床心理士は、心理学の知識を用いてこころの問題を解決できるよう支援する専門家です。資格取得までに道のりはかかりますが、専門性を活かした関わりでクライアントの問題が解決すると非常にやりがいを感じられる仕事です。クライアント様にしっかりと向き合いたい気持ちや、生きやすい生活を考えたいという気持ちが強い方に向いている職業でしょう。
通信制大学では、自分に合ったペースで心理学を学び、臨床心理士を目指すことができますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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