通信制高校の「単位制」を徹底解説！仕組みからメリット・デメリットまで

「単位制」とは？全日制高校の「学年制」との決定的な違い

通信制高校の最大の特長である「単位制」は、全日制高校で一般的な「学年制」と根本的に考え方が異なります。この違いを理解することが、あなたに合った高校生活を見つける第一歩となります。

簡単に言うと、「単位制」とは、高校卒業に必要な74単位以上を、決められた期間内にすべて修得すれば卒業できる仕組みです。

一方、全日制高校の「学年制」は、1学年で決められた科目をすべて修得しないと進級できず、卒業もできない仕組みです。この違いをさらに具体的に見ていきましょう。

全日制高校の学年制では、もしテストで赤点を取ってしまったり、授業にほとんど出席できなかったりして、その学年の単位を1つでも落とすと、「留年」という形で同じ学年をやり直すことになります。これは、学校側が定めた年間の学習カリキュラムに沿って全員が進んでいくためです。

しかし、単位制ではこの考え方がありません。たとえば、1年間で履修した科目のうち、いくつかの単位を落としてしまっても、次の年にその科目をもう一度履修し直せばよいのです。そのため、留年という概念がなく、自分のペースで着実に単位を積み重ねていくことができます。

単位制の仕組みをわかりやすく解説

では、具体的に「単位」はどのようにして取得するのでしょうか？高校卒業までに必要な単位数は、どの学校でも74単位以上と定められています。これらの単位は主に以下の方法で修得していきます。

• レポートの提出: 自宅学習で教科書や参考書を使い、指定された課題に取り組みます。
• スクーリングへの参加: 学校が指定した日に登校し、先生から直接指導を受けます。
• 単位認定試験: レポートやスクーリングで学んだ内容を基に、試験で合格点を取ります。

これらの学習を通じて単位を修得していくため、全日制高校のように毎日朝から夕方まで授業を受ける必要はありません。自分の体調や生活スタイルに合わせて、学習計画を立てることができます。参照：文部科学省 単位制高等学校

【メリット】通信制高校の単位制が選ばれる理由

通信制高校の単位制は、単に「高校を卒業する」だけでなく、生徒一人ひとりが自分らしく生きるための大きな可能性を秘めています。特に、以下に挙げる3つのメリットは、多くの生徒と保護者が単位制を選ぶ決め手となっています。

メリット① 自分のペースで無理なく学べる

全日制高校の最大の課題の一つは、全員が同じ時間割で、同じ学習ペースで進むことです。しかし、単位制ではこの常識が覆ります。

学習のメインとなるのは、自宅でのレポート作成やオンライン学習です。これにより、体調がすぐれない日や、自分の好きなことに集中したい日などは、無理に学校へ行く必要がありません。多くの通信制高校の生徒は、レポート提出やオンライン学習を主体とした学び方を選んでいます。

この自由度の高さは、特に以下のような生徒にとって大きなメリットとなります。

• 人間関係に疲れてしまい、自分のペースで落ち着いて学びたい生徒
• 持病や障がいがあり、毎日決まった時間に登校するのが難しい生徒
• プロのスポーツ選手や芸術家を目指しており、練習や活動時間を確保したい生徒

メリット② 留年がない！自分のペースで卒業を目指せる

「留年」という言葉は、高校生活に不安を抱える生徒にとって、非常に大きなプレッシャーとなります。しかし、単位制にはこの留年という概念がありません。

全日制高校の学年制では、各学年で定められた単位をすべて修得できないと、進級できずに同じ学年をやり直すことになります。しかし、単位制では、たとえ1年間で履修した科目の単位をいくつか落としてしまっても、次の年にその科目を再履修すればよいのです。

これにより、生徒は焦ることなく、自分の理解度に合わせて学習を進めることができます。例えば、数学が苦手なら、その科目に時間をかけてじっくり取り組み、得意な科目はサッと終わらせる、といった柔軟な学習計画が立てられます。これは、学び直しをしたい生徒にとって、心理的な負担を大幅に減らすことにつながります。

メリット③ 好きなことや仕事と両立できる

単位制の最大の強みは、時間的・場所的な制約が少ないことです。これにより、高校の学習と、自分の夢や仕事、ライフワークを両立させることが可能になります。

• 芸能活動やモデルの仕事をしている
• プロのゲーマーを目指して毎日練習したい
• 起業家としてすでにビジネスを始めている

このような生徒が、高校卒業という将来の選択肢を確保しながら、現在の活動に全力を注ぐことができます。実際に、多くの有名人が通信制高校の出身であることからも、その柔軟性は明らかです。

自分の「好き」や「得意」を諦めることなく、高校生活を送れることは、その後の人生を豊かにする大きな財産となるでしょう。

【デメリット】単位制高校を選ぶ前に知っておくべきこと

単位制高校は、多くの生徒にとって理想的な学びの場となる一方で、注意すべき点も存在します。これらのデメリットを事前に把握し、対策を講じることが、後悔のない学校選びにつながります。

デメリット① 自己管理能力が求められる

通信制高校の最大の魅力である「自由」は、同時に最大の注意点でもあります。全日制高校のように決まった時間割や授業がない分、自分で学習計画を立て、それを実行する自己管理能力が不可欠となります。

具体的には、以下のような点が挙げられます。

• 学習の進捗管理: 「いつまでにどのレポートを提出するか」「どの科目をいつまでに終わらせるか」といった計画を、自分で立てて実行する必要があります。
• モチベーションの維持: 自宅での学習が中心になるため、周りに友だちや先生がいない環境で、一人で学習を続ける強い意志が求められます。

しかし、これは決して難しいことではありません。多くの通信制高校では、週に一度のホームルームや、オンラインでの面談を通じて、担任の先生が学習計画の相談に乗ってくれます。また、生徒の学習進捗をシステム上で管理し、遅れが出ないようサポートしてくれる学校も増えています。自己管理に自信がない場合は、こうしたサポート体制が充実している学校を選ぶと良いでしょう。

デメリット② 友人関係が希薄になることがある？

「友だちができるかな…？」という不安は、通信制高校を検討する中学生や保護者の方からよく聞かれる質問です。毎日顔を合わせる全日制高校と比べると、通学日数が少ない通信制高校では、友人関係が希薄になるのではないかという懸念があるのは当然です。

しかし、最近の通信制高校では、この課題を解決するための工夫が数多くなされています。

• 多様な交流の場: 学校行事（文化祭、遠足など）や部活動、サークル活動を通じて、生徒同士が交流できる機会が用意されています。
• オンラインでのコミュニケーション: グループ学習やクラスでのオンラインチャットなど、デジタルツールを活用した交流も活発です。
• 通学スタイルの選択: 週1～5日と、自分の希望に合わせて登校日数を増やせるコースを選ぶことで、登校するたびに友だちに会える機会を増やすことができます。

もちろん、自分から積極的に行動することも大切ですが、学校がこうした交流の場をどれだけ用意してくれているかどうかが、充実した高校生活を送るための大きなポイントになります。

こんな人は単位制高校が向いています

ここまでの解説を読んで、「もしかして自分に合っているかも？」と感じた方もいるかもしれません。単位制高校は、すべての人におすすめなわけではありませんが、特に以下のようなタイプの人には大きなメリットがあります。

自分のペースで学びたい人

• 全日制高校の学習ペースについていけなかった人: 授業のスピードが速く、置いていかれてしまった経験がある人でも、単位制なら自分のペースでじっくり学び直せます。
• 不登校を経験した人: 人間関係や集団生活が苦手でも、自分の体調や精神状態に合わせて、無理なく学習を進められます。
• 基礎から学び直したい人: 中学校の勉強に自信がない人でも、つまずいた単元から遡って学習できるため、着実に学力をつけることが可能です。

高校生活でやりたいことがある人

• プロのスポーツ選手や芸術家を目指している人: 毎日学校に行く必要がないため、練習やレッスンの時間を十分に確保できます。
• 好きなことや夢中になれることがある人: 興味のある分野の勉強や趣味に多くの時間を費やしたい人には、単位制の自由な時間が大きな強みになります。
• 海外留学をしたい人: 留学期間中も単位を修得できる制度がある学校を選べば、海外での経験と高校卒業資格を両立できます。

一度高校を中退した人、不登校を経験した人

• 学び直しをしたい社会人: 高校卒業資格がないことでキャリアの選択肢が限られてしまうと悩んでいる人も、働きながら卒業を目指せます。
• 「もう一度、高校生活をやり直したい」と考えている人: 新しい環境で、自分のペースで再スタートを切ることができます。

単位制高校は、画一的な学び方から抜け出し、一人ひとりが自分に合った高校生活を送るための大切な選択肢です。

単位制高校で卒業するには何が必要？

「単位制って、どうやったら卒業できるの？」という疑問は、特に保護者の方から多く聞かれます。卒業のためにクリアすべき条件は、実は全日制高校とほぼ同じです。

• 3年以上の在籍期間
• 74単位以上の修得
• 特別活動への参加

これらの条件をすべて満たすことで、高校卒業資格を得ることができます。全日制との大きな違いは、この74単位を自分のペースで修得できることです。

【卒業条件】必要な単位数や在籍期間

文部科学省の規定により、高校卒業には最低3年間の在籍期間が必要です。しかし、単位制の場合は、この3年間で74単位以上を修得すればよいため、学習進度が遅れても、焦る必要はありません。例えば、一度高校を中退した人が再入学した場合、以前に修得した単位を引き継ぐことで、最短での卒業を目指すことも可能です。

単位は「レポート」「スクーリング」「テスト」で取得する

単位の修得方法は、全日制高校とは大きく異なります。通信制高校では、以下の3つの学習を組み合わせて単位を積み重ねていきます。

• レポート（添削指導）: 自宅で教科書や教材を使って学習し、レポートを提出します。
• スクーリング（面接指導）: 学校が指定する日に登校し、先生から直接指導を受けます。登校日数は学校によって異なり、年に数日〜週数日など様々です。
• 単位認定試験: レポートとスクーリングで学んだ内容を基に、試験を受けて合格すれば、正式に単位が認められます。

多くの通信制高校では、1単位を修得するために、おおよそ3〜5通のレポート提出と、1〜2時間のスクーリング、そして試験が必要となります。

転校・編入を検討中の方へ：前の高校で取得した単位は引き継げる？

「以前の高校でせっかく頑張った単位は無駄になるの？」という心配は不要です。全日制高校や他の通信制高校で修得した単位は、多くの場合、新しい学校に引き継ぐことができます。これを「単位認定」といいます。

転入や編入を希望する場合、元の学校から「単位修得証明書」や「在学証明書」といった書類を発行してもらう必要があります。これらの書類を提出することで、以前の頑張りが新しい学校でも認められ、卒業に必要な単位数を減らすことができます。

Q&A｜通信制高校の単位制に関するよくある質問

これまで単位制について解説してきましたが、まだいくつかの疑問が残っているかもしれません。ここでは、特に多く寄せられる質問にQ&A形式でお答えします。

単位制高校はどんな雰囲気ですか？

全日制高校のように活気にあふれた雰囲気もあれば、静かで落ち着いた雰囲気の学校もあります。多くの学校では、生徒一人ひとりの個性を尊重する校風があり、自分のペースで学びたい人にとって居心地の良い環境が整っています。

単位制高校から大学進学はできますか？

はい、単位制高校から大学進学できます。通信制高校を卒業すれば、全日制高校と同じ「高校卒業資格」が得られるため、大学受験資格も問題なくあります。近年は、大学進学を目的としたカリキュラムや、進路指導に力を入れている通信制高校も増えています。

授業料はどれくらいかかりますか？

一般的に、全日制高校よりも安く抑えられる傾向にあります。授業料は「1単位あたり〇〇円」と設定されていることが多く、修得する単位数によって変動します。また、「高等学校等就学支援金制度」を利用すれば、国の支援金で授業料がほとんどかからなくなるケースもあります。

学費に関しては、以下の記事に詳しく解説しています。

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単位制高校の入試は難しいですか？

入試は、学力試験を課さない学校がほとんどです。多くの場合、書類選考や面接、簡単な作文が中心となります。これは、生徒の学習意欲や個性、そして「この学校で頑張りたい」という気持ちを重視しているためです。

おわりに：まずは一歩踏み出してみませんか？

この記事では、通信制高校の「単位制」について、その仕組みからメリット・デメリット、卒業までの流れまで、幅広く解説してきました。

高校卒業は、あなたの将来の可能性を大きく広げるための大切なステップです。もし今、高校生活に不安を抱えていたり、新しい学び方を探していたりするなら、通信制高校の単位制は、その悩みを解決する強力な選択肢になります。

あなたの状況に合った学校は、必ず見つかります。まずは一歩踏み出し、情報収集から始めてみませんか？

この記事が、あなたの未来を考えるきっかけになれば幸いです。